余弦定理
【単元の目次】
《数学Ⅰ・A》
数と式  • 根号計算  • 場合の数.順列.組合せ  • 確率  • 2次関数 • 2次不等式  • 集合・命題・条件・証明  • 正弦定理,余弦定理
♪♥ この教材は,高校数学の基本問題のうち,余弦定理のマイナーチェンジありのカバー版です.
♫♣ 元の教材が通信トラブルなどで読めないときに,こちらを使ってください.なお,学習の記録は付いていません.
■余弦定理

■はじめに■…この頁を学習すると、何ができるようになるのか

■三平方の定理の拡張…(中学校の数学との関係)
 右図1のような直角三角形については、
a2=b2+c2 …(1)
が成り立ちます。(三平方の定理
 では、図2のようにA90°でないときには、この定理はどんな形になるのでしょうか。
 図2のようにb , cの値が変わらずに、A90°よりも小さくなると、図1のときと比べてaの値は小さくなるはずです。
a2=b2+c2|??| …(2)
 また、A90°よりも大きくなると、図1のときと比べてaの値は大きくなるはずです。
a2=b2+c2+|??| …(3)
 この頁を学習すると、|??|に入る式が分かり、直角三角形でない場合でも第3の辺aの長さを求めることができるようになります。

■三角形の合同条件・決定条件との関係…(中学校の数学との関係)
 図3、図4のような三角形において、二辺(b , c)とその間の角(A)が与えられると三角形は決まります。(三角形の合同条件・決定条件)
 中学校ではこの「決まる」という定性的な性質までを習いますが、ではそれは「幾ら」になるのかという定量的な取り扱いまでは行いません。
 この頁を学習すると、二辺(b , c)とその間の角(A)から第3の辺(a)の長さを計算で求めることができるようになります。

 三角形の合同条件・決定条件には、この他「3辺が与えられると三角形は決まる」というのもあります。
 これによれば、3辺の長さが与えられれば、3つの角度もすべて決まるはずですので、「3辺の長さ」→「3つの角の大きさ」という計算ができるはずになります。
 この頁を学習すると、「3辺の長さ」から「3つの角の大きさ」を計算することができるようになります。
図1

図2

図3

図4

図5

■余弦定理
 △ABCについて次の関係式が成り立ちます。
a2=b2+c2−2bccosA …(A)
b2=c2+a2−2cacosB …(B)
c2=a2+b2−2abcosC …(C)
※ (A)だけ覚えればよく、残り2つはお互いの関係から分かります。
(自分)2=(他人)2+(他人)2−2(他人)(他人)cos親子
【例1】
b=5, c=3 , A=120°のとき、aを求めるには
a2=52+32−2×5×3×cos120°=49
a=7 (>0) …(答)
【余弦定理(A)の証明】
b, c , Aが与えられているとき、直角三角形AHCの3辺の長さが求まるので、HB , HCの値から三平方の定理を使って BCを求めます。
 右図6において、頂点Cから辺ABに引いた垂線をCHとする。
 △AHCは直角三角形だから、
   → CH=bsinA
   → AH=bcosABH=c−bcosA
 △BCHは直角三角形だから、三平方の定理により
  a2=(bsinA)2+(c−bcosA)2
   =b2sin2A+c2−2bccosA+b2cos2A
   =b2(sin2A+cos2A)+c2−2bccosA
   =b2+c2−2bccosA

A90°よりも大きいときは、上の証明でcosA<0となるが同様にして示すことができます。また、∠A=90°のときは、cosA=0となり、三平方の定理によりa2=b2+c2が成り立ちます。■
(B)(C)についても同様にして示されます。
図6

(参考)
 余弦定理において、∠A>90°のとき
a2=b2+c2+|??| …(3)
+|??|の部分は、次のように足し算になります。

 例えば、上の【例1】においてA=120°のとき、cosA=−1/2になりますので、

 a2=52+322×5×3× (−1/2)
   =52+32+15
【例2】
 △ABCにおいて、b=2 , c=3 , A=60°のとき、aを求めてください。
(解答)
 a2=22+32−12cos60°=4+9−6=7
 これはまだ答ではありません!
余弦定理から出てくるのはa2の値なので、その正の平方根を求めて答にします。
 a= (>0) …(答)
【例3】
 △ABCにおいて、a=7 , b=8 , C=120°のとき、cを求めてください。
(解答)
 c2=82+72−2·56cos120°=169
 c=13 (>0) …(答)
【余弦定理を理解するために前提となる事柄】
 「余弦」とは三角関数のうちのcosθの値のことで、余弦定理を使うためには0°~180°の余弦の値が言えなければなりません。
 実際に、宙で暗記して言えなければならなのは次の9つの値だけです。
θ 30° 45° 60° 90° 120° 135° 150° 180°
cosθ 1 0 −1
■(正弦定理と余弦定理の見分け方)
 この問題だけを見れば「公式に当てはめるだけ」に見えますが、範囲が広くなると「正弦定理」「余弦定理」のどちらに当てはめるのか迷ってしまう場合があります。
 次のような「作戦盤」を書いて、上下(辺と角)1組が分かっていれば「正弦定理」で解けます。辺と角が1つもそろわなければ「余弦定理」で解けます。
(「作戦盤」というのはここだけの話で、答案に表を書くのは構いませんが「作戦盤」という言葉を書くと笑われます。)
a b c
A B C
この問題では、辺と角が1つもそろわないので「余弦定理」を使います。
【問題1】 次の各問に答えてください.(選択肢の中から正しいものをクリック)
(1)
△ABCにおいて,のとき,aを求めてください.
(2)
△ABCにおいて,のとき,cを求めてください.
(3)
△ABCにおいて,のとき,bを求めてください.
(4)
△ABCにおいて,のとき,bを求めてください.
■3辺の長さから3つの角を求めるには

 a2=b2+c2−2bccosAという関係式が成り立つときに、この式をb , c , Aが分かっているときにaを求める:
a2=b2+c2−2bccosA
という使い方に限られるわけではありません。
 余弦定理を変形すれば、b , c , aが分かっているときにAを求めるという使い方もできます:
a2=b2+c2−2bc cosA

この式をよく見ると、「右辺は辺の長さだけ」でできており、左辺は角度だけでできています。
したがって、この式を利用すると「3辺の長さ」から、「角Aを求めることができます。
(正確には、角AそのものではなくcosAが求まりますが、cosAが分かれば(三角関数表があればAが求まります。)

 同様にして(B)(C)を変形すれば、B , Cが求まりますので、次にようにまとめることができます。
【余弦定理】(の変形)
 △ABCについて次の関係式が成り立ちます。
a2=b2+c2−2bc cos A …(A’)
b2=c2+a2−2ca cos B …(B’)
c2=a2+b2−2ab cos C …(C’)
※ (A’)だけ覚えればよく、残り2つはお互いの関係から分かります。すべて、
の形をしています。
【例4】
 △ABCにおいて、a=8 , b=7 , c=5のとき、Bを求めてください。
「作戦盤」
a b c
A B C
この問題では、辺と角が1つもそろわないので「余弦定理」を使います。
(解答)
 
 B=60° …(答)
cosθ0°から180°まですべて異なる値になりますので、cosθからθを求めるとただ1つの値に決まります。

【例5】
 △ABCにおいて、a=, b=, c=のとき、Cを求めてください。
「作戦盤」
a b c
A B C
この問題では、辺と角が1つもそろわないので「余弦定理」を使います。
(解答)
 
 C=90° …(答)
【問題2】 次の各問に答えてください.(暗算では無理です.計算用紙で十分計算してから,選択肢をクリック)
(1)
△ABCにおいて,のとき,Aを求めてください.
(2)
△ABCにおいて,のとき,Cを求めてください.
(3)
△ABCにおいて,のとき,Aを求めてください.
(4)
△ABCにおいて,のとき,Bを求めてください.
■余弦定理を2次方程式として使うには

a2=b2+c2−2bccosAという関係が成り立つとき、a , b , Aが分かっているときにこれを、cの2次方程式として解くことができます。
【例6】
 △ABCにおいて、a=7 , b=5 , A=60°のとき、cを求めてください。
(解答)
 72=52+c2−2×5ccos60°
 c2−5c−24=0
 (c−8)(c+3)=0
 c=8 (>0) …(答)
この問題に対して「作戦盤」を作ると次のようになり、aAで辺と角がそろうので、「正弦定理」でBが求められますが、それ以外にここで行ったような「余弦定理の2次方程式」という切り込み方があるということです。
a b c
A B C
【例7】
 △ABCにおいて、a=2 , b=2 , A=30°のとき、cを求めてください。
「作戦盤」
a b c
A B C
(解答)
 
 c2−6c+8=0
 (c−4)(c−2)=0
 c=4 , 2 …(答)
(この問題で、正弦定理を用いてBを求めても、解は2つ出ます。)
■1辺とその両端の角が与えられた問題
 三角形の合同条件・決定条件は3つあります:
(1) 3辺が与えられたとき
(2) 2辺とその間の角が与えられたとき
(3) 1辺とその両端の角が与えられたとき
(1)(2)は、上に述べたように(はじめの一歩は)余弦定理で解くことができます。

a b c
A B C

 (3)は右図のような場合で、作戦盤を書くと2つの角度が分かっていることになります。このような場合には高校で習う「正弦定理」や「余弦定理」以前の解き方があり、中学で習う三角形の内角の和の公式
A+B+C=180°
A=180°−B−C
を使えば、残り1つの角は即答できることになります。
【特急券あり型】
 角が2つ分かっている ⇒ 残り1つは即答できます

(参考)
 「2辺とその間にない角が与えられたとき」は、三角形の合同条件・決定条件に対応していません。
 右図のようにa , b , Aが与えられたとき、これらの値によっては三角形が2つ描けることがあります。そこで、次のような作戦盤になるときは解が2つになることがあります。
a b c
A B C
a b c
A B C
【問題3】 次の各問に答えてください.(暗算では無理です.計算用紙で十分計算してから,選択肢をクリック)
(1)
△ABCにおいて,のとき,aを求めてください.
(2)
△ABCにおいて,のとき,cを求めてください.

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