正弦定理
【単元の目次】
《数学Ⅰ・A》
数と式  • 根号計算  • 場合の数.順列.組合せ  • 確率  • 2次関数 • 2次不等式  • 集合・命題・条件・証明  • 正弦定理,余弦定理
♪♥ この教材は,高校数学の基本問題のうち,正弦定理(解説)のマイナーチェンジありのカバー版です.
♫♣ 元の教材が通信トラブルなどで読めないときに,こちらを使ってください.なお,学習の記録は付いていません.
■正弦定理

(はじめに)
 三角形を表すとき
多くの場合,頂点の名前はA, B, Cの順に左回りに付けます。
○辺の名前は「向かい合う角」の小文字で表します。したがって,Aの対辺BCaとします。同様にして,特に断り書きがなければb=AC, c=ABになります。
○頂点の名前A, B, Cでその内角ABCの大きさを表し,単にsinA, sinB, sinCなどと書きます。
【例】
右図においてa=BC=8, b=AC=6, c=AB=7になります。

(角度が大きいと辺も大きい)
 右図のような三角形を描いてみると,3つの角度の中でBが一番大きいとき,その対辺bは3辺の中で一番大きくなります。Aが一番小さいとき,その対辺aは3辺の中で一番小さくなります。(中間の角度Cには中間の辺cが対応します。)

 しかし,
のような単純な関係にはなりません。
辺の長さが角度に比例するのではなく,
 実は「辺の長さは角度の正弦に比例するという関係になっています。

 そこで,以下に述べる関係式は「正弦定理」と呼ばれます。

【正弦定理】
 △ABCの外接円の半径をRとするとき,
が成り立つ。
【例】
次の図において,
が成り立ちます。
【正弦定理を理解するために前提となる事柄】
■1
 「正弦」とは三角関数のうちのsinθの値のことで,正弦定理を使うためには0°~180°の三角関数の値が言えなければなりません。
 実際に,宙で暗記して言えなければならなのは次の9つの値だけです。
θ 30° 45° 60° 90° 120° 135° 150° 180°
sinθ 0 1 0
■2 そもそもsinAは辺の長さの比とは限らない!!
≪いくら読んでも分からない人へ≫
 そもそも,次の図イのような場合sinAは 4/6 にはなりません.
 三角形の「2辺の長さの比」が正弦の値になるのは直角三角形の場合だけで,それ以外の場合にはsinAの値は「2辺の長さの比」にはなりません。

 (右図イのような場合も含めて)一般に,角度Aの値によってsinAの値が決まり,これとは別に辺の長さが決められていると考えることが重要です。

■3
 次のような「比例式」の変形に慣れることが重要です。

(1) 比例の関係を分数に直すには,2つの考え方がありますが,3つ以上のときにも使えるのは,番号順に対応させる方法です。
比の値で考える a:b=x:y3つ以上には使えない
番号順に対応させる a:b=x:y

番号順に対応させる a:b:c=x:y:z
【例】
3:5:7=x:y:z

(2) 連なっている比例式は,切り離して使います。
A) 2つに分けて使います:
【例】
B) 「師匠が直接管理する」
 


a=kx, b=ky, c=kz
【例】
3=kx, 5=ky, 7=kz
【正弦定理の証明】
■3(2)B)の「師匠が直接管理する」参照
の代わりに
に分けて証明します。
(ア) A=90°のとき
右図1のように,Aは直径の上に立つ円周角になるから,
sinA=sin90°=1a=2R
このとき,
が成り立ちます。
(イ) 0°<A<90°のとき
(ア)でうまく証明できたのは,直径を利用したからでした。そこで,直径を利用すればうまくいくかもしれないと考えます。
 右図2のようにBから中心を通る直線を引くと,BA’は直径になります。このとき,は「式の値」なので,形が変わってもaの値とsinAの値が同じならば,値は等しいことに注意します。
 そうすると,右図のようにAA’とが円周角として等しい場合には,に等しいので,を求めてもよいことになります。
 △A’BCは直角三角形ですから,
が成り立ちます。
したがって
(ウ) 90°<A<180°のとき
(イ)でうまく証明できたのは,直径を利用したからでした。そこで,もう一度直径を利用することを考えます。(柳の下のどじょうを狙います。ただし,今度は90°<A<180°なので円の中心は三角形の外にありますが,かまわずBOを延長してBA’を作ります。)
 右図3のようにBから中心を通る直線を引くと,BA’は直径になります。このとき,は「式の値」なので,形が変わってもaの値とsinAの値が同じならば,値は等しいことに注意します。
 そうすると,右図3のようにAA’とが円に内接する四角形の向かい合う角になっているときは,A’=180°−Aになりますので,■1を見ても分かるようにsinA=sinA’が成り立ちます。
に等しいので,を求めてもよいことになります。
 △A’BCは直角三角形ですから,
が成り立ちます。
したがって
以上の(ア)(イ)(ウ)により,が示されたことになります。
同様にしてBCについても証明することができますので,が証明されます。
図1
図2
図3



【例1】
 △ABCにおいて,a=8, A=45°, B=60°のとき,bを求めてください。
(考え方)
■3(2)A)の考え方で
のように切り出すと,と解くことができます。

■(ここだけの話として)次のような「作戦盤」を書いて,上下(辺と角)1組と他の角(または辺)が分かっていれば,残りの1つは「正弦定理」で解けます。(ただし,分母はsin を付けて使います。)
a b c
A B C

(解答)

より・・・(答)
【例2】
 △ABCにおいて,a=2,, A=30°, のとき,Cを求めてください。
(考え方)
■「作戦盤」
a b c
A B C
■3(2)A)の考え方で
のように切り出すと,と解くことができます。
(ただし,正弦定理で”角度”を求めると,次の答案のように解が2つ出てくることがあります。そのとき,2つとも解であることも,1つだけが解で他方は解でないこともあります。A+C>180°のようなときは,その解は不適当です。)
(解答)

より,
C=60°, 120°・・・(答)
A=30°, C=60°, 120°のいずれの組でも,B=90°, 30°となって三角形はできますので,両方とも解です。
【例3】
 △ABCにおいて,a=3, A=120°, のとき,外接円の半径Rを求めてください。
(考え方)
■「師匠が直接管理します」
 をそのまま使います。
(解答)

より,・・・(答)
(参考) 正弦定理の別の証明・・・もっと直接的に示す方法

中学校で習う「円周角の定理」と高校数学Ⅰで習う「180°までの三角比」が分かっていれば,正弦定理の意味をもっと図形として見たままの形で示すことができます.
まず,次の2つの定理を思い出します.
【円周角の定理】
 円周角は中心角の半分に等しい
(中心角は円周角の2倍に等しい)
【180°までの三角比】
90°<A<180°のとき
sinA=sin(180°−A)
A=90°のとき
sinA=1


ア ***** 0°<A<90°のとき *****
中心角は円周角の2倍になるから
BOC=2A
BOH=HOC=A
したがって,右図の黄色の三角形を見ると

イ ***** 90°<A<180°のとき *****
中心角は円周角の2倍になるから
大きい方のBOC=2A
BOD=DOC=A
ところで,右図の黄色の三角形について
sinA=sin(180°−A)
=sinA’

したがって


ウ ***** A=90°のとき *****
sinA=1であるが
 図で考えるときは,右図でHOにだんだん近づいて,△OHCがつぶれてくる場合を想像すると
この場合も

が成り立っていることが分かる.

***** 以上により,アイウのいずれの場合でも *****

が成り立つ.すなわち

が成り立つ.
B, Cについても,同様に示せるから
正弦定理

が成り立つ.

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